平成中村座十月大歌舞伎 『通し狂言 仮名手本忠臣蔵』

週末、芸術の秋ということで、日本の古典文化に触れてきました。

昨日の切腹最中を見つけて買って来たのはその会場でした。

平成中村座を2日連続で観劇。

ご本堂落慶50周年の記念開帳で賑わう浅草寺の境内に、江戸時代の芝居小屋が再現され、10〜11月に公演中ですが10月は歌舞伎の独参湯(=起死回生の気付け薬)と言われる『通し狂言仮名手本忠臣蔵』。

古典中の古典だけど、歌舞伎を見ること自体僕は初めて。。。以前からチャンスは有ったのですが、出張と重なって勘三郎さんの襲名披露を見逃したり・・・云々で今に至る。平成中村座も何度かチケットを取り損ね今回が初でした。


今回の仮名手本忠臣蔵は、全十一段を4つのプログラムに区切って上演ということで、チケットの都合上、時間的には逆順なんだけど、土曜日にDプログラム、日曜日にAプログラムを。

歌舞伎美人より

【Dプログラム】
五段目:山崎街道鉄砲渡しの場、同 二つ玉の場
六段目:与市兵衛内勘平腹切の場
七段目:祇園一力茶屋の場

 若手が大役に挑むこのプログラムでは、勘太郎の早野勘平、七之助のおかる、孝太郎の一文字屋お才で「五段目」「六段目」を、そして橋之助の大星由良之助、勘太郎の寺岡平右衛門、七之助のおかるで「七段目」を上演します。他のプログラム以上に熱気溢れる舞台をお楽しみ下さい。
 また仁左衛門不破数右衛門勘三郎が判人源六で出演し、若手が奮闘する舞台を盛り上げます。

【Aプログラム】
大序:鶴ヶ岡社頭兜改めの場
三段目:足利館表門進物の場、同 松の間刃傷の場、同 裏門の場
四段目:扇ヶ谷塩冶判官切腹の場、同 表門城明渡しの場

 物語の発端であり、儀式的な要素の色濃い「大序」から、殿中での刃傷を描いた「三段目」、大星由良之助が名残惜しげに館を立ち去る「四段目」までを上演します。また今回の公演ではおかると勘平が山崎へと落ちて行く様子を原作どおり、裏門の場で見せるのが話題のひとつとなっています。
 定評ある勘三郎の塩冶判官に、ともに初役となる橋之助高師直と、孝太郎の顔世御前。また勘太郎七之助による早野勘平とおかる。そして仁左衛門の大星由良之助という魅力ある配役でご覧いただきます。


2日間とも休憩は挟むけど4時間に及ぶ長〜ぃ話なので、後半はバテバテ(周りもコックリコックリしてる人がチラほら。僕も一瞬は・・・)でしたが、特に印象深かった場面を・・・

初日の最初、五段目。盗賊・斧定九郎が与市兵衛殺しの場面。一仕事終えた定九郎が暗い舞台中央で袖口と裾をぎゅっと絞る所作。それだけで、しとしとと雨の降りしきる物騒な山崎街道に引き込まれました。
そして、その後、イノシシだと思って定九郎を2発の弾で撃ち殺した猟師・早野勘平が、暗闇の中仕留めた獲物を探して歩く場面。実際に火の付いた火縄を銃から外し、くるくるっと回しながら空気に触れさせ明かり代わりに辺りを照らす。でもそこは闇夜、濡れた藁に火縄が当たって消えてしまう。何カ所かで蝋燭も出て来たけど、舞台上でも本物の火を使うのかぁ〜と。
そして七段目、一力茶屋の場。それまでとは打って変わって、華やかでした。七之助演じるおかるの綺麗なこと。惚れます。。。


2日目は物語最初の操り人形による口上から開始。もともと、仮名手本忠臣蔵自体は人形浄瑠璃なので、「と〜ざい、とざい・・・」の東西声で幕が引けた後に居並ぶ役者たちは最初は微動だにせず。みんな人形なんですね。義太夫に名前を呼ばれて初めて役として魂が吹き込まれ、動き出す。。。吉良上野介である高師直、憎々しさったら有りゃしないです。
師直の黒、塩冶判官の黄色、桃井若狭之助の青とビジュアル的にも美しかったし、大序段は見られて良かったな。
三段目、松の間での刃傷沙汰の場面で塩冶判官をいびり通すところも酷い。だんだんと勘三郎判官の目が怒りに満ちるのが見て取れました。

とまあ、書き出したらきりがない程、盛りだくさん。。

僕自身、忠臣蔵を初めてしっかり見たのは、丁度10年程前の大河ドラマ元禄撩乱」だったと思います。配役はその時は大石内蔵助・主税親子を中村勘九郎七之助親子が演じてました。以来、年末のドラマでも見ることは無く、話の筋も忘れかけていたのですが、今回は見る前に事前予習もしておいて、会場での音声ガイドにも助けられたお陰で非常に楽しめました。音声ガイドもライブでの案内ということで、要所で解説がはいり役者の台詞だけでは着いて行けない初心者には必需品でした。


残念だったのが、換気扇の音。2階席で見ていましたが、どうも定期的にヘリコプターの飛ぶ様な音がする。え?東京の空ってこんなにヘリが飛び回ってたっけ?と友人と顔を見合わせていたのですが、外に出て謎が溶けました。
小屋の正面壁面に換気扇が有り、廻っているのですが、空気の流れに小屋のテントがはためいているのか、ばたばたと大音量でしたよ。芝居関係者の方、なんとかしてほしいなぁ〜と思います。


書いた通り、忠臣蔵の魅力を語る程見たこと無いんですが、話としても、特に舞台ではビジュアル的にも、随所に日本人の血に受け継がれている何かに触れるものが有るようです。長時間だったけど、今回一気に見られて良かったです。(十一段目の討ち入りまでは見られなかったけどね。)
年末の長時間ドラマ、今年はじっくり見てみるかなぁ。



仮名手本忠臣蔵を読む (歴史と古典)

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