『働くということ』

元が日経新聞の連載記事なので,一つ一つのエピソードが短く読み易い。その分多くの人の仕事・生き方が紹介されてて,自分と異なった仕事をしてても共感できる部分があったり,ちょっとほろりとさせられて,地下鉄内でで読んでたのでこらえるのに大変だったり・・・。

できる限り実名,実年齢を記載し,その人の働きぶりや心情に迫り,時には家族との軋轢や生死を巡る葛藤も描き,限られた行数ながら,人々の「人生」が凝縮した働きぶりを伝え様と試みました。(はじめに)

の通り,人々の声を載せている分,凄く人間くさい感じが出て表情の見える内容になっていた。また読みながら,今の自分の年齢,立場と照らし合わせて,自分の立ち位置を確認するための一つの定規にもなるかなぁと感じた。
ただ,せっかくここまでの取材をしたのであれば,そのいくつかはもう少し話を広げたものが読みたかったかなぁとも感じる。また,各エピソードの終わりの数行に必ず書かれている,大手のシンクタンクや省庁の発表する統計値,これらはそんなに重要ではない気がする。ほとんどその辺は読み飛ばしたな。


自分自身,実際に働き始めるまでは,ほとんど大学までに勉強してきたことと実社会での繋がりが見えてなかったし,"働く自分"をイメージできずに,何となく社会に出てしまったかなぁ?と,今だから振り返られる。学生までの間に,何かしら実社会との接点をもって働いてみるという機会が与えられていれば,もう少し違った見方で漕ぎ出せたのかもしれない。今では当たり前となった,インターンシップのような仕組みは受け入れる企業にとっても学生にとってもそれなりに意義があることではないか。

そういった点からも,本書の第一章終わりの[この人に聞く]で,東大教授の玄田氏が,下記のように述べているのは,共感できる。

「日本の中学二年生を全員,一週間働かせてみたい。やりたいことを見つけさせるのではない。同じ中学二年生の友達ではなく,知らない大人ともつながりを持てることを実感してほしい。子供の好奇心を大人が受け止める。日本中で実施すれば,時間はかかるが必ず何かが変わると思う。」

自分の職場にも,就業体験の様な取組みで,年に1度程度,地元の中学生が来ているのを見かける。現在具体的にどんなシステムで動いているのか詳しくは知らないが,義務教育の中に,全員を対象とする点を組込むことが出来れば,教室内で,国語や数学の授業を教科書ベースでやるよりも遥かに意義のある時間になると感じる。


とはいえ,自分が受け入れる立場になると,それなりに覚悟がいるよなぁ…。